【商社業界:図解で3分解説】どんな仕事をやる?向いている学生や今後の動向、企業ランキングも紹介
はじめに
年収が高いことで有名な商社業界。
初任給も他の業界と比べて高いため狙っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では商社業界の基礎知識や今後の動向・具体的な仕事内容・向いている学生の特徴まで紹介します。
「商社業界への就職を考えている」「どんな業界か知りたい」と感じている人はぜひ参考にしてみてください。
業界研究をする前に
本題の前にそもそも業界研究の目的とはなんなのかを明確にしておくことが大切です。
業界研究の目的は、自分に合った業界・職種かどうかを見極めて就職後のミスマッチを無くすためです。業界について詳しくなっても「自分にあっているか?」を考えなければ意味がないのです。
そのため業界研究は自己分析と一緒に行う必要があります。
この記事では商社の業界について紹介しますので、自己分析結果と照らし合わせて活用してみてください。
なお、業界研究のやり方がよくわからない人は以下の記事を事前に読んでおくことをおすすめします。
商社業界とは
まずは商社業界の全体像を学んでいきましょう。
現時点では商社がなにをする会社なのかがわからなくても大丈夫です。この章で基礎からしっかり確認していきます。
- 商社業界の概要
- 商社業界の基礎知識
- 商社業界の売上高ランキング
- 商社業界の年収ランキング
商社業界について理解を深めるために以上4点について見ていきましょう。
商社業界の概要
商社の仕事は大きく分けるとトレーディングと事業投資の2つで成り立っています。
それぞれどんな仕事なのか見ていきましょう。
①トレーディング
トレーディングは企業同士をつなげる仕事です。商品を販売したい企業と商品を買いたい企業の間を取り持ちます。
一言で言うなら仲介役でしょう。たとえば、自動車を作る企業と部品を作る企業をつなげるような形です。
自動車を作る企業は部品を買いたいと思っており部品を作る企業は部品を売りたいと思っています。
それぞれのニーズを汲み取ってつなげていくのが商社の仕事なのです。
そんなトレーディングで商社は以下2つを収入源としています。
- コミッション:手数料
- マージン:買値と売値の差額
コミッションは言うなれば仲介手数料です。企業同士をつなげることでつながる企業同士もメリットがあります。
「メリットを提供するかわりに手数料をもらう」のがコミッションです。
一方、マージンは買値と売値の差額のこと。先ほどの自動車の例で言えば10,000円で買った部品を15,000円で売るといった形です。
この場合には買値と売値の差額である5,000円がマージンであり、商社の収入になります。
企業同士をつなげるだけでなく、自社の収入を確保するための交渉も行うのです。
会社の収益源を理解しておくと、会社に貢献できる働き方がしやすくなります。ぜひ覚えておきましょう。
②事業投資
事業投資は、他の企業に対して投資をすることです。投資と言ってもお金だけでなく、ノウハウや人材も投資していきます。
他企業の業績をアップさせることで収益を得るのです。事業投資による商社の収益は、大きく分けると以下2つがあります。
- 直接的な収益:キャピタルゲインとインカムゲイン
- 間接的な収益:企業同士のシナジー(相乗効果)
①は投資先の企業が成長することによって得られる利益です。
キャピタルゲインは低迷している企業を買収し、価値を高めてから売ることで得る利益を指します。
一方で、インカムゲインは企業に投資している間に得られる利益です。たとえば、株式の配当金などが当たります。
②の間接的な収益は投資した複数の企業同士がつながることで生まれるシナジーのこと。
たとえば、自動車を作る企業・自動車の部品を作る企業・配送をする企業に投資したとしましょう。
それぞれの業績が伸びれば直接的な収益が得られることは先ほどお伝えした通りです。
そして配送する企業が間に入ることで自動車の部品をスムーズに届けられるようになります。これがシナジーです。
商社は複数の企業をつなげることで大きなビジネスを作ります。商社にしかできない仕事と言えるでしょう。
「大きな仕事がしたい!」という人は商社に入ることも検討してみてください。
商社業界の基礎知識
商社には以下2種類があります。
- 総合商社:さまざまな商品を扱う
- 専門商社:特定分野の商品を扱う
商品が違うだけではなく収益源のバランスや仕事内容も異なります。
商社への就職を考えるのであればそれぞれの違いも理解しておきましょう。
①総合商社
総合商社では実にさまざまな商品を扱います。ただ、1人がさまざまな分野の商品を扱うわけではありません。
「あなたはこの分野を担当してください」という形で特定の分野に配属されます。
そのため、総合商社に就職する場合にはどこに配属されるのかに注意しましょう。
興味のない分野に配属されてしまうと、仕事が苦痛になってしまいます。興味のある分野も明らかにしておいてください。
また、総合商社はトレーディングよりも事業投資からの収益が多いです。企業への投資に興味がある人は総合商社を選ぶとよいかもしれません。
②専門商社
専門商社は特定の分野で活動を行います。具体的には収益のうち50%以上を特定分野から得ている商社のことです。
ただ、中には複数の専門分野をもっている「複合型専門商社」と呼ばれる企業もあります。
総合商社と違って専門の分野が決まっているため配属のリスクは低めです。
また、事業投資よりもトレーディングからの収益が多いという特徴があります。企業同士をつなげる仕事がしたい人は専門商社がおすすめです。
商社業界の売上高ランキング
業界について詳しく理解するために売上高トップ3の企業を分析していきましょう。
トップ企業の経営状況や方針は業界全体の指標となるからです。
総合商社と専門商社に分けて紹介していきます。
総合商社の売上高ランキング
総合商社の売上高ランキングは以下の通りです。
総合商社はビジネスの規模が大きいため、どの企業も売上が大きいのがわかるでしょう。
専門商社の売上高ランキング
専門商社の売上高ランキングは以下の通りです。
総合商社と比べると売上高は小さくなります。
商社業界の年収ランキング
商社はさまざまな業界の中でも年収が高い業界として有名です。
商社に興味をもっている人の中には、年収の高さに魅力を感じている人も多いのではないでしょうか。
そこで、商社ごとの年収ランキングを紹介していきます。総合商社と専門商社に分けているので、興味がある方から読んでみてください。
なお、基本的には総合商社の方が年収が高い傾向にあります。
総合商社の年収ランキング
総合商社の年収ランキングは以下の通りです。
平均年収ですので、会社に入社してすぐにこの金額がもらえるわけではないことに注意してください。
- 三菱商事:1,631万円
- 伊藤忠商事:1,565万円
- 丸紅:1,452万円
- 住友商事:1,437万円
- 三井物産:1,393万円
- 双日:1,154万円
- 豊田通商:1,100万円
- 兼松:903万円
専門商社の年収ランキング
専門商社の年収ランキングは、以下の通りです。
表示されているのは平均年収であり、入社すれば必ずもらえる金額ではありません。
- マクニカ・富士エレHD:1,020万円
- 長瀬産業:1,004万円
- 三洋貿易:996万円
- オプティマスグループ:985万円
- 西川計測:929万円
- 岩谷産業:917万円
- アルコニックス:917万円
- 伊藤忠エネクス:914万円
- 高島:892万円
- ミツウロコグループHD:883万円
商社業界の現状と今後の動向
業界選びでは自分にあうかどうかだけでなく、将来性があるかどうかも大切です。
商社業界は元々、トレーディングを主な収益源としていました。
しかし、インターネットの登場によって、トレーディングでは収益が得にくくなっていきます。ネットがあれば仲介がなくとも企業同士がつながれるからです。
その後、事業投資による収益化が進み、現在の体制になりました。
では、商社業界はどのような現状があり、今後はどうなっていくのでしょうか。それぞれ順番に紹介していきます。
商社業界の現状
以上のグラフは大手総合商社の売上推移です。
メモリの100が2014年の売上を示しており、100以上なら成長、100以下なら衰退になります。
企業ごとに違いますが、売上が安定しておらず厳しい状況に置かれていることがわかるでしょう。
売上が安定しない背景には、エネルギー分野の不振があります。エネルギー分野は商社を大きく支えてきた収入源です。
支えを失ってこれからの方向性を模索している状態と言えるでしょう。
専門商社については分野によって浮き沈みはありますが、比較的安定しています。
専門分野で深い知見や広いつながりがあるため、時代の変化をいち早く察知できるからです。
とは言え、経営判断を間違えると一気に沈んでしまう可能性もあります。
総合商社にせよ、専門商社にせよ、今後の方針がとても重要と言えるでしょう。
商社業界の今後の動向
商社の今後については、各社の判断によって大きく左右されます。一概に結論を出せないのが現実です。
ただ、AIや医療・バイオテクノロジーなど、今後の成長が見込める分野もあります。
これらの分野をどれだけ取り入れていくかによって、商社の未来は大きく変わるでしょう。
時代に必要とされている分野に対して商社がどのような態度をとっているかに注目してみてください。
商社業界の仕事内容
商社業界には複数の職種があります。同じ商社業界でも、職種によって仕事内容が異なるのでチェックしていきましょう。
ここでは、商社の代表的な職種として以下7つを紹介していきます。
- 営業
- 企画
- 事務
- プロジェクトマネージャー
- システムエンジニア
- 物流
- カスタマーサポート
興味がもてる職種や自分の適正にあっていると感じる職種を探しながら読んでみてください。
①営業
営業は、商品を売りたい企業と商品を買いたい企業を結びつける仕事です。
価格や仕入れる数などを調整しながら企業の仲介をしていきます。
他社の社員とのやりとりが必要なため高いコミュニケーション能力が必要です。
②企画
どのような企画を立ち上げるのかを考える仕事です。どういった分野で戦うのか、どの企業と取引をするのかなどを決めます。
実際に企画を立ち上げるときには、他の職種や他社との連携が必要です。
売れる企画を考えるためには、連携できる組織や時代の流れなどを広い視野で見る能力が求められます。
③事務
営業に関する資料を作成したり、電話対応をしたりする仕事です。
商社の仕事をスムーズに進めていくために裏方で会社を支えていきます。
目立つ仕事ではないため地道にコツコツと作業する能力が必要です。
④プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーは専門商社にのみある仕事です。
自社の商品と市場について分析しながら、これからどうやって売上をあげていくかを考えます。
企業全体の方針を決めますのでリーダー的存在の職種だと言えるでしょう。
⑤システムエンジニア
プログラミング言語を使って、流通に役立つシステムを作る仕事です。
たとえば、Amazonや楽天市場などのように、商品を販売できるECサイトの運営を行います。
システムがなければ進まない仕事もあるため、確実に機能するシステムを構築する能力が必要です。
⑥物流
商社で扱う商品を管理する仕事です。仕入れ・保管・出荷を担当します。
商品数を正確に把握する能力が必要です。また、同時にコストのかからない管理の仕方を目指していきます。
⑦カスタマーサポート
関わった商品についての問い合わせに応じる仕事です。
クレーム処理や満足度の向上をはかり、今後の戦略に役立てていきます。
商社業界に向いている学生の特徴5つ
ここまで、商社業界の仕事内容について紹介してきました。とは言え、仕事内容だけでは「自分に向いているかわからない」と感じる人も多いでしょう。
商社業界に向いている人の特徴5つを紹介していきます。
- コミュニケーション能力が高い人
- 好奇心が旺盛な人
- 行動力がある人
- 分析が得意な人
- 臨機応変に対応できる人
どれも大切な要素ですが、すべてに当てはまらなくても問題ありません。仕事をしていく中で能力が身についていくからです。
1つでも当てはまるものがあるのなら、その長所を活かしながら他の能力も伸ばしていくことを考えていきましょう。
①コミュニケーション能力が高い人
商社は企業と企業の橋渡し役なので、高いコミュニケーション能力が求められます。
「仕事のほとんどがコミュニケーション」と言っても過言ではありません。
企業同士の利害関係も考えながら、商社の利益を確保できるように交渉していく必要があります。相手の心理を深く読み取りつつ、自分の主張を通していくのです。
また、海外の商品を扱う場合には語学力も求められます。グローバルに活躍したい人はコミュニケーションスキルと同じように、語学力にも磨きをかけていきましょう。
②好奇心が旺盛な人
好奇心が旺盛で勉強することが好きな人が商社に向いています。
商社では違う業界同士をつなぎあわせて新しいビジネスを作ることもあるからです。
自分が担当する分野だけでなく、ビジネスにおけるあらゆる知識が求められます。
あらゆる分野の知識を楽しく学び、日頃から情報感度を高めておきましょう。
まずは、ビジネスに関するニュースをチェックすることを習慣にしてみてください。
③行動力がある人
商社の仕事は行動力がある人に向いています。たくさんの商品を扱う商社の仕事は流行に左右されるからです。
新しいものに対して抵抗感をもって、踏み出せないと、流行に乗り遅れてしまいます。
時代の流れは加速していますから、迅速に行動を起こせる人が必要です。
もちろん、考えなしに動くこととは違うので、注意してください。
普段の生活から、即決即断を意識してみるとよいでしょう。たとえば、レストランに食事に行ったら1分以内に注文を決めるなどの訓練をしてみてください。
④分析が得意な人
商社の仕事は分析力が必要とされます。市場の流れや流行を分析し、必要とされる商品を見つけ出す必要があるからです。
1つの情報をいろいろな視点から考え、判断することを意識していきましょう。
普段からニュースを見て、世の中がどう変化しているのかを考える癖をつけてみてください。
1日1分でも毎日繰り返せば、分析力が磨かれていきます。
⑤臨機応変に対応できる人
臨機応変に対応できる人は、商社の仕事に向いています。商社の仕事には、流行にあわせた決断が必要だからです。
商社業界の動向でもお伝えしましたが、商社が求められている機能が変化してきています。
現在の商社が事業投資を行っているのも、時代の流れによるものです。
また、在庫管理をする際には、売れ行きを考慮した対応が求められます。売れていないのにたくさん買い付けてしまっては困るからです。
今後も時代の流れを観察しつつ、自分で考えて臨機応変に対応する力を身につけていきましょう。
ニュースで取り上げられる問題に対して、「自分だったらどうするか?」を考えてみると対応力の訓練につながります。
まとめ
商社業界について紹介してきました。
企業同士をつなげることで大きなビジネスを行う商社。年収が高いこともあり魅力を感じる人は多いでしょう。
とは言え、ビジネスの規模が大きい分、小さな判断ミスでも大きな損失が出ます。
これから商社業界が伸びていくかどうかは各社の経営判断によって差が出るでしょう。
今後伸びていきそうな分野に注目すると将来性のある企業を見つけやすくなります。
あなた自身が興味のある分野なども考慮しつつそれぞれの企業について分析を進めてみてください。
就活先を決めるときには、業界分析とあわせて自己分析を行うことが重要です。
自己分析について知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。