【出版業界:図解で3分解説】向いている学生の特徴とは?実際の仕事内容や今後の動向、企業ランキングも紹介
はじめに
小説や漫画・雑誌などのコンテンツづくりに携われる出版業界。
読書好きの人の中には、「つくる側に回りたい!」と考えている人もいるでしょう。
しかし、インターネットの普及などを考えると、出版業界に対して将来性の不安を感じるかもしれません。
そこでこの記事では、出版業界の将来性や仕事内容・向いている人の特徴などを紹介していきます。
出版業界に入りたいと考えている人はぜひ参考にしてみてください。
業界研究をする前に
適切に出版業界について理解していくためにも、まずは業界研究の目的を確認しておきましょう。
業界研究は、業界や職種への理解を深めてあなたに合った仕事を見つけることが目的です。
自分に合っていない仕事に就いている状態は、いわゆるミスマッチであり、仕事上で大きなストレスを抱えやすくなってしまいます。
健康を維持して働き続けるためにも、しっかり業界研究をしてミスマッチを防いでいきましょう。
「正直、業界研究って何をしたらいいかわからない」という人は、先に以下の記事を読むようにしてください。
出版業界とは
出版業界は、漫画・雑誌・書籍などを制作して販売する業界です。
さらに深く理解していくために、以下3つを確認していきましょう。
- 基礎知識
- 概要・ビジネスモデル
- 売上ランキング
出版業界の基礎知識
出版業界は上の図のように3種類の会社があり、それぞれが連携して書籍を作っています。
3つの会社がどのような役割をもっているのかについて紹介するので、確認してみてください。
①出版社
出版社は書籍を制作する会社です。
ジャンルや書籍の形態(漫画や雑誌など)を問わずさまざまな書籍を扱う大きな出版社もあれば、特定分野に特化した小さな出版社もあります。
どんな出版社に就職するかによって仕事内容が異なるので、注意しましょう。
「漫画が好き!」など特定のジャンルや書籍形態にこだわりがある人は、好きなものを扱っている小さな出版社を探すとよいかもしれません。
とくにこだわりのない人は大きな出版社に所属して、さまざまな書籍に触れてみるとものづくりの楽しさを実感できますよ。
②書店
書店は書籍を販売する店であり、いわゆる本屋です。書店も出版社と同じようにさまざまなジャンルを扱う店と、専門書などに特化した店があります。
陳列方法など「どの本をアピールしていくか」は書店が決められるため、仕事における自由度が高いと言えるでしょう。
手書きのポップを作成したり、「夏に読みたい怪談」など特定のコーナーを作ってみたり、アイディアを出して実行するのが好きな人に向いています。
③取次
取次は出版社から書籍を買い取り、書店に卸す会社です。
取次が間に入ることで、全国の書店に書籍を届けることができます。
詳しくは後述しますが、売れ残った書籍の返却などの作業も取次の仕事です。
出版業界の概要
出版業界のビジネスモデルは、上の図のようになっています。前章で紹介した3種類の会社が連携して書籍をつくり、販売しているのがわかるでしょう。
このビジネスモデルの中で出版業界特有の制度として、以下2つがあります。
- 委託販売制度
- 再販売価格維持制度
出版業界を理解する上では、2つの制度の理解は欠かせません。
漢字ばかりで嫌になるかもしれませんが、噛み砕いて解説するのでぜひチェックしてみてください。
①委託販売制度
委託販売制度とは、出版社が取次や書店に販売活動を任せることを指します。
本が売れ残った場合には、書店は取次を通して出版社に返品できるのが大きな特徴です。
スーパーやコンビニなどの通常の販売店は、商品を仕入れたら在庫の処分までを行わなければいけません。
しかし、出版業界では販売店が在庫処分を行わず、出版社へ返品する形が取られているのです。出版業界の特徴的な文化ですので、覚えておきましょう。
返品が多ければ多いほど出版社は赤字を抱えることになります。
赤字が出るにもかかわらず返品を受け入れているのは、書籍の価値は売れる数にとらわれないと考えられているからです。
たとえば、専門性が非常に高い書籍は多くの人が買うものではありませんが、技術の進歩や文化の継承においては高い価値があります。
経済的な価値だけではなく、文化的な価値も提供するために委託販売制度があるのです。
ただ、委託販売制度は世界的に見ると一般的ではなく、書店が在庫処分までを行います。書店が赤字を出すことになるので、売れにくい本はあまり市場に出回りません。
世界と比べると日本の出版業界が文化の継承に重きを置いているのがわかりますね。
「本当に価値のあるものを継承したい」という思いがある人は、出版業界でやりがいを感じられるかもしれません。
②再販売価格維持制度
再販売価格維持制度とは、新品で販売する書籍は出版社が決めた価格でしか売っていけないという決まりです。
本は文化の継承を担うメディアなので、誰でも公平に購入できる環境を整えるべきだとされています。
そのため、再販売価格維持制度によって経済的な利益を追求して価格競争が起こり、格差が起こることを防いでいるのです。
ただ、大学内の書店などの一部の書店では再販売価格維持制度が義務付けられていない場合もあります。
出版業界の売り上げランキング
出版業界の売り上げランキングは上の通りです。
業界上位の企業について理解を深めると、出版業界全体の動向が見えてきます。
上位の企業はシェアも高く、時代の先駆けになっているからです。
企業サイトでも情報収集できますので、気になる企業があれば調べてみましょう。
出版業界の現状と今後の動向
続いて、出版業界の将来性について見ていきましょう。
いくらやりがいを感じるような仕事であっても、将来性のない業界では長く働き続けられません。
終身雇用制度の破綻でキャリア形成への考え方も変化していますが、長く働き続けることに価値を置く考え方も根深いです。
あなたのキャリアプランを設計するためにも、出版業界の現状と今後の動向について確認してみてくださいね。
出版業界の現状
出版業界の市場規模は、上の図のように停滞・衰退傾向にあります。インターネットの普及による大きな影響を受けているのがわかるでしょう。
しかし、電子書籍や特需などによって市場が盛り上がることもあります。
電子書籍は、スマートフォンの普及や読み放題サービスの登場によって徐々に経済規模を拡大してきました。
特需とは、SNSの効果で1度流行が生まれると、大きな経済効果が起きる現象のことです。出版業界はどれだけ流行るものを生み出せるかの勝負になっています。
特需が発生する仕組みとして、SNSの他にクロスメディアという手法の登場も大きな要因です。
クロスメディアとは、1つの作品を書籍・漫画・アニメ・映画など複数のメディアで取り上げていくことを指します。
アニメなどで作品を知った人が、書籍に興味をもって購入することもあるのです。
出版業界に携わる場合には、ウェブ業界やアニメ業界などにも注目しておいた方がよいでしょう。
「将来が暗い」と思われがちな出版業界ですが、電子書籍や特需などで一定の盛り上がりが起きていることも知っておいてくださいね。
出版業界の今後の動向
電子書籍は、出版業界を大きく支える収入源として期待されています。しかし、以上の図のように電子書籍化には多くの課題が残っているのが実情です。
写真や図解が多い書籍は電子化しても画質が悪く読み取れない、電子化のコストが高いなどの問題があります。
多くの人は「電子化=コスト削減」というイメージがあるかもしれません。しかし、実際は電子化する際に必要な権利の処理に高いコストがかかります。
今後、テクノロジーの発展によって電子化の課題がどれほど解決できるかに注目していきましょう。
電子書籍の他にも、企業は以下のような打ち手で業界を盛り上げようとしています。
- 付録:雑誌に実用性のある付録をつける
- ネット販売:ネット注文を可能にして購入する手間を省く
- クロスメディア:複数メディアを活用して販売数アップを狙う
- 読み放題:月額課金で電子書籍を読み放題にする
- オーディオブック:書籍を音声コンテンツ化する
出版業界の市場規模を大きくしていくためには、従来のやり方では通用しない現実が見て取れますね。
ITサービスを活用するなど、まったく新しいビジネスモデルが求められているのです。
業界全体で見ると衰退傾向にありますが、成果の出るビジネスモデルが生まれれば大きく回復する可能性もあります。
出版業界はもちろんのこと、IT業界などの関連業界の動向にも注目してみてください。
出版業界の仕事内容
出版業界全体の理解が進んだところで、職種について見ていきましょう。
同じ業界内でも職種によって求められる適性が異なります。
向いている人の特徴も紹介しますので、あなたに向いている職種を探してみてください。
出版業界の職種は大きく分けると以下4つがあります。
- 制作
- 編集
- 営業・販売
- 総合職
①制作
書籍を作ることに関わる仕事です。呼び名は会社によって異なりますが、主に以下のような職種があります。
- 取材:現場で当事者にインタビューを行う
- カメラマン:書籍内で使う写真を撮影する
- エディトリアルデザイナー:書籍内のページをデザインする
- ブックデザイナー:表紙をデザインする
- ライター:取材内容などをもとに文章を作成する
- 作家・漫画家:小説や漫画を描く
文章・写真・デザインなど、制作の仕事だけでもかなり幅があるのがわかるでしょう。
制作の仕事は、ものづくりや表現することが好きな人に向いています。
②編集
編集は、出来上がった文章の見直しを行って仕上げをする仕事です。大きく分けると以下2つがあります。
- 編集者:書籍の企画から原稿完成まで著者と出版社の間を取り持つ
- 校正・校閲者:誤字脱字や文法ミスのチェックをする
編集者はコミュニケーション能力がある人や人と関わるのが好きな人に向いています。
校正・校閲者は間違いを見つける仕事なので、地道な作業がほとんどです。
集中力が高い人やもくもくと作業に没頭するのが好きな人に向いているでしょう。
③営業関係
営業関係は、完成した書籍を世の中に広めたり、販売したりする仕事です。
- 営業:雑誌の広告主を探す
- 販売:イベント企画などを通して書籍販売をする
- 宣伝:ポスターなどで書籍の認知度拡大を目指す
広告に興味がある人やイベントが好きな人などに向いています。
④総合職
総合職は、出版業界だけでなく他の業界でも広く存在する仕事です。
直接的に書籍の制作や販売に関わるわけではありませんが、裏方として出版業界を支えます。
- 経理
- 人事
- 総務
- 法務
- 経営企画
総合職の場合には、創造性よりも指示されたことを正確にこなす力が求められます。
事務作業が好きな人や「創造性はないけど出版に関わりたい!」という人におすすめです。
出版業界に向いている学生
出版業界について紹介してきましたが、「自分に向いているのかな?」と疑問を感じている人もいるでしょう。
そこで、出版業界に向いている学生の特徴を5つ紹介していきます。
- 新しいことを身につける
- 計画的を立てる
- 考えることが好き
- 仲間意識が強い
- チャレンジ精神がある
①新しいことを身につける
常に勉強し続けて新しいことを身につけられる人は、出版業界の仕事に向いています。
出版業界はこれから新しいビジネスモデルを探るなど、変革の時期に差し掛かるからです。
また、出版業界には「トルツメ」「赤」などの業界用語が多くあります。
業界用語を勉強して覚えるためにも、新しいことを身につけるのが好きな人の方がストレスなく仕事ができるでしょう。
②計画を立てる
出版業界の仕事は常に締め切りに追われるため、計画を立てられる人が向いています。
締め切りから逆算して「〇〇は△日までに終わらせる」などと計画を立てる能力が必要です。
また、常に複数の仕事をこなさなければいけないため、視野の広さも求められるでしょう。
締め切りが近い仕事や重要度が高い仕事から優先して取り掛かる必要があるからです。
試験勉強やイベントの準備などで計画を立てて、計画的に行動する癖をつけてみるとよいでしょう。
③考えることが好き
考えることが好きな人や物事を多面的に深く考えられる人は、出版業界に向いています。
何かを作り上げることは判断の連続であり、適切な判断をするためには思考が必要だからです。
書籍を楽しむときには深く思考せずとも問題なく楽しめます。しかし、作るときには言葉の言い回しやデザインなど気を配るべきことがたくさんあるものです。
なんとなくで決めるのではなく、深く思考をして考えて決めることを日常でも意識してみてください。
④仲間意識が強い
仲間意識が強い人は、出版社の仕事に向いています。
書籍の製作は複数の職種が関わりながら、チームでつくり上げるものだからです。
校閲者や作家など作業中は1人になる職種もありますが、基本的には人と相談しながら仕事をします。
人と関わることを楽しみ、仲の良い人たちと仕事をすることに喜びを感じる人は、出版業界に入ることも検討してみてください。
⑤チャレンジ精神がある
チャレンジ精神がある人は、これからの出版業界で活躍できるでしょう。
出版業界は新しいビジネスモデルを必要としているからです。
さまざまなことにチャレンジすることで、新しいビジネスモデルを発見できる可能性が上がります。
また、チャレンジすることを見つけるための情報感度の高さも求められるでしょう。
小さくてもよいので挑戦することを習慣にしたり、出版業界に関わりの深いアニメ業界やIT業界などのニュースにも注目したりしてみてください。
まとめ
出版業界について紹介しました。
インターネットの登場によって全体として衰退傾向にありますが、電子書籍や音声コンテンツなどの新たなビジネスチャンスもあります。
関連業界のニュースにも注目しながら、出版業界を盛り上げるアイディアを考えてみるとよいでしょう。
関連業界は複数ありますが、まずは電子書籍やネット販売などで関わりの深いIT業界について理解を深めるのがおすすめです。
IT業界については以下の記事で紹介していますので、この記事と併せて読んでみてくださいね。