【生命保険業界:図解で3分解説】どんな仕事をやる?向いている学生や今後の動向、企業ランキングも紹介
はじめに
就職活動を始めると「採用数の多い会社」として出てくるのが金融業界です。その中でも生命保険業界は毎年安定して採用数が多いことで知られます。
一方で「金融」や「保険」というと固そうなイメージがあり「自分でできるのだろうか?」「窮屈そう」と敬遠しがちです。
生命保険業界は実は非常に身近なもので約88%の世帯がお世話になっているサービスです。
ここでは生命保険業界の社会的役割や今後の動向、向いている学生の特徴等を解説していきます。
今まで興味のなかった方はもちろん、業界研究を進めてきた方でも新しい発見のある内容となっています。 是非最後までご覧ください。
業界研究をする前に
生命保険業界について理解をするにあたって「そもそも業界研究をなぜやるのか」、目的を明確にすることから始めましょう。
業界研究では業界の情報を集めることだけでは不十分です。
業界の情報と自己分析の結果と照らし合わせることで、自分の特性にあった業界なのかどうかを考えられるようになります。
そして入社後のミスマッチを防ぐことが業界研究の正しい目的です。
この記事を読むときは、生命保険業界について理解を深めつつ「本当に自分に合う業界・仕事内容なのか」を考えながら読み進めてみてください。
ちなみに業界研究を始めたばかりの人ややり方がよく分からないという人は、こちらの記事も合わせて読んでみてくださいね。
業界研究の目的・やり方を正しく理解したうえで、生命保険業界が自分にふさわしい業界なのか見極められるようにしましょう。
生命保険業界とは
生命保険の業界は大きく2つに分けることができます。
1つは生命保険を作る会社でありいわゆる「生命保険会社」はここにあたります。
現在生命保険を作る会社が自分で保険を販売する直販が半分くらいあります。
2つ目は保険の販売代理店です。生命保険会社は自分で作った保険しか売りませんが、代理店は様々な会社の保険を取り扱います。
生命保険は契約者の方が毎月や毎年保険料を保険会社へ納めます。
実際に契約者の方が亡くなられた時や高度障害になってしまった時に保険金が支払われます。
保険料を納めてから実際に支払いをするまでの間に何十年もの期間があるので生命保険会社にお金がたくさん貯まります。
生命保険会社は貯まったお金を投資に回してお金を増やします。
都市の色々なところに「●●生命ビル」というがたくさんのは生命保険会社の人が働いているのではなく、資産運用としてビルを持っているからです。
生命保険業界の概要
生命保険は大きな産業です。
近年は法律改正の影響やインターネットの保険販売が増えてきており、業界の構造も大きく変わりつつあります。
主なプレイヤーや役割を把握しましょう。
1.老舗生命保険
古くから日本の生命保険を支えてきた企業です。多くがいわゆる大企業として非常に大きな規模の会社です。
日本生命、第一生命、明治安田生命等が主要企業です。
2.損保系
近年は損害保険会社のグループにある生命保険会社が規模を拡大しています。
東京海上あんしん生命保険、三井住友海上あいおい生命保険、SOMPOひまわり生命保険等があります。
3.外資系
生命保険の世界1位はアメリカですので、米国系の生命保険会社が多く日本に進出してます。
がん保険のさきがけとなったアフラックや富裕層に強みを持つプルデンシャル生命等があります。
4.ネット専業系
インターネットでの生命保険の販売ができるようになり、事業者も増えています。
有名なのはライフネット生命です。SBI生命保険、楽天生命保険等インターネット金融大手の進出も目立ちます。
5.販売代理店
生命保険会社が自社の保険のみを販売するのに対し、専門販売店や銀行は様々な会社の保険商品を取り扱います。
1社でなく複数の会社の商品を取り扱うことで本当にお客さまのニーズに合った保険を選ぶことができます。
ほけんの窓口グループ、イオンの保険相談などがこの販売代理店にあたります。
生命保険業界の基礎知識
生命保険の主要なプレイヤーについてみてきましたが、TVCMで見たことある会社ばかりだったかと思います。
ここからは生命保険業界を志望するのであれば必ず抑えておきたい知識を3つ紹介いたします。
1.生命保険と損害保険の違い
1つ目はそもそも生命保険と損害保険は何が違うのか、ということです。
商品の細かい設計はさておき概念的なところを抑えていただければと思います。
- 生命保険:自分が亡くなったときや高度障害になり働けない時のための保険
- 損害保険:物が火事や事故等によって破損・損壊した時のための保険
または誰かに自動車事故等で危害を与えてしまった時の保険 - 第三分野:がんや疾病などにより入院費用や治療費を賄うための保険
このようにざっくり3つに分かれていると思ってください。
2.相互会社と株式会社の違い
日本生命は相互会社です。第一生命は株式会社です。何が違うのでしょうか。
相互会社というのは生命保険会社だけに認められた特殊な会社形態です。「保険を契約している人」が「相互に助け合う」ための会社です。
そのため株主のために利益を出す必要もなく保険契約者の方たちにしっかりと保険の機能を維持することが求められます。
株式会社は株主のための利益を出すことが求められる一方、多額のお金を株式市場から調達することができます。
結局は健全な経営を守ることが保険の契約者のためになると考えると、どちらがいいということはなく一長一短です。
メリット・デメリットをまとめてますのでそちらの表をご覧ください。
3.ソルベンシー・マージン比率とは
ソルベンシー・マージン比率は保険会社の健全性を示す指標となっています。
人が亡くなるようなことは突然に起きます。保険会社も突然多額の保険金を払わないといけなくなります。
そんな時にでもしっかりと保険受取人の方々に保険金を払えるのかどうかを見るのにこの指標を見ます。
一般的に高いほど健全性は高く200%を超えていると健全であるとされます。
生命保険業界の契約保有件数ランキング
生命保険の保有契約数ランキングです。 日本生命やアフラック、第一生命等の大手が上位にいます。
特徴的なのは自社の強い販売網を持っている会社が上位に来ていることです。
銀行や代理店での販売が増加しているものの依然として自社の強い営業体制を持っている会社が強いと言えます。
損保系も頑張ってはいるもののトップ10にはランクインできていないですね。
生命保険は一度契約すると長い期間契約が継続することから業界の構造が大きくは変わりづらいです。
生命保険業界の大手は非常に安定的な業績を維持できるということです。
生命保険業界の現状と今後の動向
次に生命保険業界の現状と今後の動向について解説します。
業界の主要な流れによっては活躍できる人材も求められるスキルも変化しますので、業界研究としては大切なポイントになります。
現状
生命保険業界は基本的に安定的な業界ではあります。 現状で抑えていただきたいのは以下3つのポイントです。
1.保険の契約高は頭打ち
保険契約者数や契約残高は増加しておりません。
人口が減少していく日本においては市場の拡大は見こせないというのが現状です。 特に生命保険は20~60歳の方々が加入する保険になります。
若年層が減少していくと日本国内の市場規模は今後縮小していくことが想定されます。
2.ライフネット生命の衝撃「透明化」
基本的に保険料金というのは以下の3つの構造で決まっています。
- 予定死亡率 :保険加入者の方がどれくらい亡くなる可能性があるか
- 予定利率 :どれだけ資産運用で稼げるか
- 予定事業費率:生命保険会社を運営するのにかかるコスト
生命保険の金額をお客さまに提示するときに上記3つの内訳は特に提示をしないのものでした。
それをライフネット生命が開示したのです。
ライフネットはインターネット専業で営業の人員もいないため、事業費を大きく抑え保険料を下げています。
今までなんとなく「保険て高いな」と思っていた人が保険料が決まる仕組みを理解し、より安い保険でも同じ保証が受けられることに気づいたことは大きな変化です。
今後も保険料の透明性が求められる時代になっていくでしょう。
3.販売チャネルの多様化
生命保険は非常に大きな買い物です。毎月2万円を30年払うということであれば720万円にもなります。だからこそ失敗はしたくないですよね。
今まではそれぞれの保険会社が自社の保険しか説明してくれないので、他社の保険商品と比較がしづらい状況でした。
よくわからないから大手にしておけば間違いないだろうということで大手が強い状況でもありました。
しかし最近は銀行窓口や代理店によって様々な保険会社の商品を比較することができるようになりました。
こちらの図はほけんの窓口という保険会社を比較してくれる会社の売上高の推移ですが、堅調に伸びていることがわかるかと思います。
生命保険は難しい内容でもありますので頼りになる人のアドバイスがとてもありがたいものですね。
今後の動向
安定度の高い生命保険業界ですがいくつかの傾向があります。ここでは3つほど主な傾向をお伝えします。
1.大手への更なる集約
最近では日本生命が業界大手の三井生命(現・大樹生命)を傘下に加えたことが話題になりました。
市場が拡大しない中で収益性をあげるには規模を拡大して間接コストを減らすことです。
安定性のある生命保険業界なのですぐには動きはしませんが、今後もゆっくりと生命保険会社が統合をしていくことが予想されます。
2.始まりだした「Ins tech」
Finance × Technologyでフィンテックと言いますが、Insurance × TechnologyでIns tech(インシュテック)と呼ばれています。
保険は事前に内容が決まっているパッケージ商品ですが、AIの活用により個人の状況に合わせた商品開発ができるようになると期待されています。
その他AIが営業担当にお客さまに最適な商品をレコメンドしたりと活用の幅が広がっています。
3.海外展開が進む
日本の生命保険会社による海外展開も進んでいます。第一生命がオーストラリアやアメリカの生命保険会社を傘下に収めています。
日本では市場自体が拡大しないのでシェアの奪い合いしか戦いようがありません。
市場自体が伸びる海外のマーケットの方が成長しやすいので海外展開をする方が無難な戦略となります。
仕事内容
生命保険業界の全体像や今後の方向性を見てきました。
より具体的に働くイメージをつけるためにどのような仕事があるのかを見ていきましょう。
大きい会社だからこそ様々な職種がありますので自分に合った職種があるか探してみましょう。
1.個人向けの営業
個人のお客さま向けに生命保険のご提案をする仕事です。お客さまの人生により沿った保険商品を提案します。
生命保険会社に入れば自社商品を、販売代理店に入れば様々な会社の保険を取り扱います。
目の前のお客さまの人生に寄り添いたい、役に立ちたいという人にはお勧めですが、営業であるからゆえにノルマもついてきます。
2.代理店管理
銀行や代理店がいかに自社の製品を売りたくなるかを企画します。販促品を提案したり勉強会を開催したりします。
直接的にお客さまと触れ合うわけではないですが、キャンペーンを考えたりどうしたらお客さまが購買したくなるかの仕掛けを考える仕事です。
マーケティング等に興味のある人にはいいかもしれません。
3.法人向けの営業
企業向けの営業です。企業で生命保険というのは意外かもしれませんが会社として社長に保険をかけます。
特に中小企業の多い日本の会社においては社長の影響力は絶大です。その社長が不慮の事故で亡くなってしまうと事業が傾きかねません。
社長がいなくともビジネスをしっかりできるまでのお金を保険で賄うことができます。
中小企業の社長に信頼され長く企業と付き合いますので、人付き合いが得意な人にはお勧めです。
4.審査
生命保険会社の非常に大切な仕事として保険の審査があります。
契約者の皆さまからいただいた大切なお金です。保険金が必要な人に正しく渡るためには審査が必要です。
冷静に状況を判断することや時に厳しくお客さまに話をすることも求められます。
正義感の強い人が活躍できる仕事かと思います。
5.資産運用
お客さまから預かった保険金を安定的に増やしていくことが求められます。
株、債券、為替、デリバティブ、不動産等、様々な投資商品への効果的な投資を行います。
お客様の資産を預かり運用することに対する責任感を求められる仕事だと思います。
6.アクチュアリー
統計に強く保険料の算定やリスクの評価を行います。
専門の資格が必要になるためたくさん勉強が必要です。
希少価値のある資格で銀行や信託銀行、保険関連の企業にしかいません。専門性を高めたい人にはお勧めです。
7.バックオフィス
金融業界全般が規制の強い業種です。バックオフィスがしっかりとした運営の体制を整えることで安心して会社の運営ができます。
バックオフィスをやりたいという理由で保険会社を選ぶ人はいません。
自分の仕事の重要性を理解しどのような仕事にも前向きに取り組むことが求められます。
生命保険業界に向いている学生
生命保険業界には様々な職種がありますので職種によって求められる資質が変わります。
上記で見た6つの職種を3つに分類してそれぞれ求められる能力を見ていきましょう。
1.営業職
営業で必要な資質は以下の3つです。
- 感謝されるために力を発揮する
- 明確な基準で評価されたい
- 周りを巻き込んで行動を起こす
営業は人と話すことが非常に多い職種です。人のことが好きで人から感謝されたいと思うことが強みとなります。
営業である以上は月に契約を何本とる、というノルマがつきます。お客さまのことを考えつつも自分の成果に貪欲である必要があります。
わかりやすく数字で評価されますので明確な基準で評価されたい方には向いているといえます。
そして営業は自分次第と思われるかもしれませんが必ず「営業部」という組織に所属します。
個人の目標を達成するためにも周囲の協力を得ながら仕事を進める力が求められます。
2.資産運用・アクチュアリー
資産運用やアクチュアリーは基本的にオフィスワーカーです。
- 情報分析がうまい
- 広い分野の知識を持つ
- わかりやすく整理して説明する
仕事として統計や分析が重要です。数学が苦手でない必要があります。様々なところから入ってくる情報を自分なりに分析することが求められます。
また相場は世の中の動きに大きく左右されますので絶えずニュースをチェックすることが求められます。
思いがけない情報が相場を動かすこともありますので幅広い視野を持ち知識を増やす必要があります。
そして多額のお金を動かします。なぜその決断をしたかを論理的に説明しなければなりません。
専門性のある難易度の高い職種と言えるでしょう。
3.審査、バックオフィス
審査やバックオフィスは会社の要です。
- 問題から目をそらさない
- ルールに従って正確に仕事を行う
- 周りの人から信頼される
金融機関のバックオフィスは重要です。法令対応や大企業を支える規則作り、適切な人事制度が求められます。
正直審査もバックオフィスも面白くない仕事もたくさんあります。でも重要な仕事なのでしっかりと向き合わなくてはなりません。
どんな問題にも逃げずに対応する倫理観が欲しい仕事です。
バックオフィスや審査は次々と仕事が降ってきます。立ち止まると一気に苦しくなります。ルールに従って迅速かつ正確に仕事をすることが重要です。
そしてバックオフィスの仕事はチームワークです。どの仕事も自分一人で完結できるものではないため関連部署との連携が重要です。
丁寧かつ迅速に仕事を行うことで周囲の信頼を勝ち取り円滑に仕事を進めたいところです。
まとめ
ここまで生命保険業界の業界研究を行ってきました。
非常に安定度の高い業界ながらいろいろな仕事があるため多くの学生の方が自分の能力を発揮できる土壌があります。
業界の将来性として大きく伸びる成長市場ではありません。ただ保険は長期契約ですのですぐに業界が傾くこともありません。
大手企業が多く研修体制もしっかりと整っています。
まず社会人としてのスタートをしっかりと先輩や上司の姿を見ながら進めていきたいという人には魅力的な職場ではないでしょうか。
ちなみに本サイトでは、生命保険業界以外にも様々な業界について解説しています。
多くの業界を知り、就活の視野を広げていきましょう!